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9 犯罪者と接していて感じること

 犯罪者と面接などで接していると、とにかく嘘をつくことの多さには驚きを感じる。そして、最初のころは驚きを感じているが、そのうち、犯罪者が嘘をつくことに慣れ、そもそも、犯罪者は嘘をつくものだから、といった感覚を抱いたりするようになる。

 もちろん、犯罪者といってもあたりまえであるが、人間であり、人間は別に犯罪者でなくても社会生活でしょっちゅう嘘をついているのだから、その点では、変わりはないわけであるが、それでも嘘が多いと感じるわけは、やはり彼らと接する状況によるところが大きいだろう。

 何らかの犯罪をやってきたわけであるから、まずは、その犯罪から逃れようとしてやっていない、と言ったり、犯罪の内容をある程度認めた場合にも、できるだけ自分の罪が軽くなるように嘘をついたり、あるいは、嘘をつかないまでも、しゃべることを拒否したり(これは黙秘権という認められた権利である)、どうにも罪を逃れ得ないとわかると、自分の処分を軽くしようとして、自分に都合のよいような話を作ってしゃべりだしたり。取り調べの現場で接する犯罪者は、こういった感じで、嘘をつくことが多くなっていると思われる。もちろん、私自身が何か犯罪をして逮捕をされたら同じような行動をとるかもしれないが。また、嘘つきは泥棒の始まりという言葉があるが、あるタイプの犯罪者は嘘をつくことが平気であったり、日常的に嘘をついたりしていることもある。

 取り調べのような場面で犯罪者と接することを繰り返していると、犯罪者の言っていることは、まず最初からあまり信じられない、といった思いを抱くようになる。そして、実際に、嘘をついているときも結構あるわけだから。そうなると、目の前にいる被疑者は、口では自分はやっていないと述べてはいるが、本当はそんなことはなく、犯罪者というものはとかく嘘をつくもので、各種の証拠や証言からはその被疑者が真犯人である傾向が示されているわけであるから、本人はそうはしゃべってはいないものの、きっとこういう経緯で犯行現場に向かい、こういった思いから犯罪に走ったのだろう、といった具合にストーリーを作るのは、それほど不自然ではない流れであろう。

 実際には、そうしたストーリーに沿って、真実の行動が行われていた場合もたくさんあるわけで、ストーリーに沿った供述を得ようとし、嘘をついている犯罪者から自供してもらうということが、この場合には、問題にはならないのである。

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