« 4 臨床心理学的な視点からの動機理解 | トップページ | 6 ストーリーに沿った取り調べ(1) »

5 捜査と犯罪の構築

 最初にお断りしておくが、本稿は検察や警察について、非難や批判をするために書いたものではないことをご了解願いたい。

 2010年9月21日、大阪地検特捜部の主任検事が、押収したフロッピーディスクを改ざんしたという容疑で、逮捕された。裁判において証拠となる物品を改ざんしたという容疑であるから、検察の信頼を揺るがす事件であるとして、マスコミは大々的に報じている。ネットでは、例えば、以下のような記事となって報じられている。

主任検事を逮捕=郵便不正事件データ改ざん-証拠隠滅容疑、故意は否定・最高検
 障害者割引郵便制度の悪用に絡む厚生労働省の偽証明書発行事件で、大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスク(FD)内の文書データを改ざんしたとして、最高検は21日、証拠隠滅容疑で、同事件の主任検事前田恒彦容疑者(43)を逮捕した。
 村木厚子同省元局長(54)への無罪判決で、特捜捜査の問題点が指摘された事件は、検察そのものの信頼を揺るがす事態へと発展した。
 逮捕容疑は昨年7月中旬ごろ、捜査で押収した厚労省元係長上村勉被告(41)=公判中=のフロッピーディスクに記録された文書データを改ざんし、証拠を隠滅した疑い。
 関係者によると、前田容疑者は21日までの大阪地検の事情聴取に改ざんを認めたが、「誤ってやった」などと故意を否定する説明をしているという。
 最高検は同日に捜査を開始し、証明書事件の捜査にかかわった検事や当時の上司らを一斉聴取。上村被告の弁護側からFDの任意提出を受けていた。(2010/09/21-21:49 時事ドットコムから)

 おそらくこういった事件は前代未聞のことではあろうし、検察官が証拠を改ざんするとなると、重大な問題であるといわざるを得ない。その結果、無実の人間が罪に陥れられるとすれば許されるべきことではない。そういったことは、少なくとも簡単に言えることではあるが、それでは、なぜ、こういった事件が起きることになったのだろうか。
 マスコミが述べる背景の一つとして、検察官が自身の作ったストーリーに固執するあまり、そのストーリに都合の悪い証拠を改ざんしようとしたのだ、といった要因が挙げられる。同じく、ネットの記事では、

検察捜査、再び問題に=ストーリーに固執
 厚生労働省の村木厚子元局長(54)の公判では、大阪地検特捜部が当初描いた事件の構図に沿った供述調書を誘導によって作成したことが批判された。フロッピーディスク(FD)のデータ改ざん疑惑が新たに浮上した。故意であれば、違法ともいえる検察の捜査の在り方がいっそう厳しく問われそうだ。
 改ざんされたFDは検察側が証拠請求しなかった。このため、弁護側が公判前整理手続きで開示させた捜査資料が証拠採用され、最終更新日時が「2004年6月1日午前1時20分」と判明した。
 公判で検察側は日付を特定せず、村木元局長が6月上旬に元係長上村勉被告(41)に偽証明書の作成を指示したと主張。データを前提とすれば、元局長の指示は仮にあったとしても5月中となり、検察側主張は矛盾していた。(2010/09/21-13:11 時事ドットコムから)

といった報道がされている。検察官がストーリに固執したことが、データ改ざん行為が引き起こされる要因になったということである。ここで注意しておきたいが、検察官が事件について自身の描いたストーリーに固執すること自体は、犯罪ではない。そういうことをしていいのかどうか、ということについては議論の余地はあろうが。今回は改ざんしてしまったことが犯罪になったわけである。

 さて、それでは、犯罪でないが、議論の余地がある、「検察官がストーリに固執した」という部分について以下、考えていこう。

 

« 4 臨床心理学的な視点からの動機理解 | トップページ | 6 ストーリーに沿った取り調べ(1) »