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20 少年犯罪の凶悪化について考える。

少年犯罪の検挙人員で、強盗事件の検挙人員が

 平成8年には1068人であったものが、
 平成9年には1675人に増えたことがあった。
 対前年で1.6倍である。(平成18年は912人)。

 この統計数値も少年犯罪の凶悪化の根拠としてしばしば使われたものであるが、本当に少年が凶悪化して強盗が増えたのかというと、疑問に思うところがあるのだ。

 筆者は、当時、少年鑑別所に勤務していたが、同じようなことをやっていても、それまでは恐喝、傷害、窃盗という事件名で取扱がなされていたものが、強盗という事件名で警察から送られてくることが多くなったという印象がある。

 例えばの話、被害者からハンドバックをひったくりをしたところ、被害者が転倒してケガをした、というような事件では、窃盗と傷害という事件名でも、強盗致傷という事件名でも、どちらでもつけられるのである。

 あるいは、被害者を脅してお金を取ろうとして、そのときに暴力を振るってケガをさせた場合も、恐喝と傷害になるか、強盗致傷になるか、どちらにも転ぶようなところがあるのだ。

 これは、警察(もしくは、裁判所)の姿勢や、法律の運用面の問題でいくらでも代わりうるところがあるのだと思われる。

 恐喝・傷害という犯罪と、強盗致傷では受ける印象がぜんぜん違ってくる。これは余談になるが、裁判官の判断によっては、似たような事件を起こしていても、強盗致傷という事件名であれば、より厳しい判断が下される場合もあるだろう。

 非行少年の処分を決定するのは、家庭裁判所の裁判官であるが、刑事事件に長く関わってきた裁判官では、罪名による量刑判断を重く見る傾向が強い場合がある。そうした裁判官の場合には、強盗か、恐喝・傷害かというのが、相当な違いになる。
 
 ほとんど似たようなことをやってきていても、強盗とついた場合には、少年院に送致され、傷害・恐喝とついた場合には、保護観察で社会に戻される、といった事例を何度も見たことがある。

 それにしても、少年事件の強盗が増えた、平成9年といえば、神戸市須磨区で14歳の少年が酒鬼薔薇聖斗を名乗って小学6年の男児を殺害した事件がセンセーショナルに取り上げられた時期である。

 この事件がきっかけとなり,少年法が改正され、厳罰化が行われたが、この時期に世論に押されて、捜査機関の姿勢が変化したことで、少年犯罪をより厳しく取り締まるようになったのではないかと考えている。

 さて、本当に少年犯罪は凶悪化しているのだろうか。確かに、少年が加害者となって、親を殺したり、自宅に放火したり、小学生が同級生を刺し殺したり、など、ここ数年を見ても、凶悪といわれる事件が少年によって引き起こされている。それは、確かなことであろう。

 一方で、鮎川潤著:少年犯罪 平凡社新書には、少し前の世代の少年が引き起こした凶悪犯罪が紹介されている。

「昭和52年、福島県の住宅地で、小学校2年生の女子が下校後に立ち寄った児童館から自宅へ帰る途中で乱暴されて殺害された。加害者は、上級生の小学6年生であった。」

「昭和38年、愛媛県で、中学校2年生の男子生徒が11歳の少女を高校の校庭に連れ込んでわいせつな行為をし、顔を見られたため、顔と腹にコンクリートの塊を投げつけて死亡させた。」

「昭和37年、神奈川県の私立高校1年生(15歳)が、学校の近くで、親しかった友人と口論になり、ナイフで首を切り落とした。」

 もちろん、事件の内容は痛ましい限りであるが、少年による凶悪事件というものは、最近に限ったことではない。凶悪事件が増えているかどうか、ということを、実証しようとすれば、何を持って凶悪と呼ぶのかを明確に定義した上で、計量研究を行う必要があるが、少なくとも上記のような少年による事件は、しばしば起こっていたことではあるのだ。



 

 

 


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