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18 犯罪の多発化を考える

 本当は犯罪は増えていないのではないか、治安の悪化というが、本当はそんなことはないのではないか、ということの可能性について、前節まで論じてきた。

 ただ、みなさんは、お気づきかと思うが、本当のところというのは、解らないのである。

 刑法犯の認知件数が増えたのは、いろいろあって警察が事件にするようになったからで、実際はそんなに増えたわけではないのだ、と言ってみても、それが本当にそうであるかは直接はわからない。

 児童虐待にしても、最近、数としては増加して認知されているけれども、昔からあって、最近、注目を集めただけだよ、と言ってみても、本当に昔からあったのかどうかはわからない。

 前にも述べたが、犯罪は構成概念で、実体がなく、加えて、定義してもそれを完全に計測することが難しい。

 それゆえ、犯罪多発化や治安悪化への反論はどうしても歯切れが悪い。まず、世論の主体とならない、世にあまり浸透しない理由なのかもしれない。
 どちらかといえば、センセーショナルな犯罪事件を報道したり、捜査機関、司法機関、行政機関の不祥事を報道し、日本の治安は悪化した、犯罪摘発能力も悪化した、と声高に主張するほうが、受けが良いのだろうし。

 少なくとも、ここまでの話をある程度理解してくれば、そうした主張ばかりに耳を傾けるのは片手落ちだ、ということは疑いなく言えるだろう。

 本当は、世間で言われるほど、治安は悪化していないのではないか、ということの傍証として、以下の数値を見てみることにする。

 殺人の件数を見ると、

  平成 8年は、1218件
  平成14年は、1396件
  平成17年は、1392件
  平成18年は、1309件
  平成19年は、1199件
  平成20年は、1287件

 となっており、増えていたり、減っていたりするが、さほどの変化は見られない。
 ところで、殺人については、これまで述べてきたような、認知件数を左右するような要因の影響を受けにくいと考えられる。

 さすがに、世論や捜査機関の姿勢で、それまでは人が殺されても事件として受理しなかったとか、捜査しなかったとかいうことはないだろう。
 ある殺人事件が起こったことを契機に、全国一斉殺人取り締まりを行ったら、前年比で3倍殺人事件が逮捕されました、とか、そういうことはないだろう。

 治安が悪化した、と言われている割には、殺人事件は大した変化がない。「治安の悪化」という言葉自体の定義を明確にする必要はあるが、殺人事件が、あんまり変わらないくらいなのだから、それは、もう、そんなに治安が悪化したわけでもないのではないか、と言ってもよいのではないだろうか。

 
 
 


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コメント

はじめまして、 児童虐待防止の市民活動をしています。検索していてこのページにたどり着きました。今回は実際に親に虐待を受け自殺未遂までし、そこから立ち直ったことを綴った本「みにくいあひるの子供たち」を紹介したくコメントさせていただきました。 不適切だと思いになりましたら削除してください。お願いします。 サークルダルメシアン 佐藤千佳。 http://blog.okadayuki.com

投稿: 佐藤千佳 | 2006-11-18 23:08

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