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16 犯罪は増加したのか?(その1)

 交通関係業過を除く刑法犯の認知件数は、
平成 8年には、181万2119件であった。それが、
平成14年には、285万3739件に増えた。

 その間の6年間に100万件以上、犯罪が増加したことになる。

 先にも示したように、平成19年の一般刑法犯は190万8836件、平成20年の一般刑法犯は181万8023件であるから、10年前の水準に戻りつつある。

 この変化は、一体、なんなのだろうか。

 このわずかの期間に、急に人々は凶悪化し、粗暴化し、あるいは、社会が人々を犯罪に駆り立てるような変化を生じたのだろうか。
 自分自身が、あるいは自分の身の回りの人間に、その時期に急激な変化が起こってきたという実感は、どうしても持ち得ない。

 テキストの犯罪統計入門をお持ちの方は、p.58の刑法犯主要犯罪名別の認知件数の推移のグラフを見ていただきたい。

 グラフを見ると、わかるのだが、平成11年以後、傷害、強制わいせつ、住居侵入、器物損壊の各刑法犯が急激に増加していることがわかる。

 もう一つ例を挙げるが、刑法犯の中で,脅迫の認知件数が、
  平成11年には 995件であったものが、
  平成13年には2300件と2倍を越える増加を示した。

 繰り返しになるが、その2年間に社会全体にこうした急激な増加を誘発するような大きな変化があったとも考えにくい。人々が急に暴力的になったとも考えられない。

これは、この時期に捜査機関を非難する世論が強まったことで ,通報された事件については原則受理をするといったように立件,受理の姿勢に変化が生じた ことに原因が求められよう(浜井浩一 過剰収容の本当の意味 龍谷大学矯正・保護課程委員会(編) 矯正講座,23,79-137)。

 平成11年にはいわゆる桶川ストーカー殺人,栃木リンチ殺人が発生している。いずれの事件も被害者の家族が事件発生前から警察に通報をしていたにもかかわらず,警察が事件受理を回避したことで最終的に被害者が殺害されたとして警察が激しく非難された。
 
  これを受けて、平成12年3月には警察庁次長依命通達「犯罪などによる被害の未然防止活動の徹底について」が発出されている。

 こうした世論によって影響された捜査機関の姿勢の変化によって、これまでは事件としては受理していなかったような出来事も、どんどん事件として認知件数に組み込まれていった結果が、犯罪統計上の急激な増加に結びついたのではないか、と考えられるのである。


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