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15 各種犯罪の数値

 警察庁の統計をホームページでhttp://www.npa.go.jp/toukei/index.htm#sousa

で見ればすぐにわかることではあるが、一応、各種の数値を見てみよう。

 平成19年の一般刑法犯、
  つまり、交通関係業過を除いた刑法犯認知件数は190万8836件
 平成20年の一般刑法犯は、181万8023件で、内訳を見ていくと、

  • 平成19年 窃盗 142万9956件
    平成20年 窃盗 137万2840件 

     これが一番数が多い。刑法犯で最もポピュラーなのは窃盗なのである。

     新聞紙面を賑わす事件は、殺人事件や強盗事件といった派手な(?)ものが多いため、もしかすると意外に感じられるかもしれないが、物を盗むという犯罪が世の中では一番多いのである。これは、少年事件でも変わらない。
     
     平成20年では、一般刑法犯(交通関係業過を除く刑法犯)に占める割合は、75.51パーセントなので、4つに1つが窃盗となる。

     窃盗の内訳を見ると、乗り物盗が50万1331件(平成20年)で、窃盗の内の36.5パーセントを占める。窃盗の約3に1件は、自転車やバイク、自動車の窃盗である。自転車やバイク盗など、窃盗にカウントされるものには比較的軽微なものも含まれるけである。
     もちろん、軽微といっても、被害者はたまったものではないであろうが。
     
     ここから先は、余談であるが、筆者は、1度原付バイクを盗まれたことがあるが、ショックは大きかった。一方、少年鑑別所で勤務していたころは、非行少年の話を聞いていると、バイクを盗んだり、自転車を盗んだりする話は、珍しいものではなく、ごく普通で、むしろ、その程度の犯罪で収まっているならば、大きな問題はないとか、そんな認識をしていたものである。

     1度や2度、バイクを盗んだ程度では、普通は、少年鑑別所には入ってこない。何か他にもう少しちゃんとした事件(?)を犯して(例えば、金額の大きな窃盗や悪質な恐喝、被害のそこそこ大きな傷害とか)、少年鑑別所に入ってきた少年が、過去の非行歴に自転車窃盗しかしていないと、他に大したことはしていないですねえ、などと話していたりしたものだ。

     自転車を盗んで少年鑑別所に入って来ると言えば、家出をし、放浪生活の末、地元を離れた場所で自転車を盗み、現地で警察に捕まえられて親元の土地の少年鑑別所に移送されてくる、というのが定番であった。

     話が横道に逸れた。続きを見ていこう。
     

  • 平成19年 知能犯 7万5999件
    平成20年 知能犯 7万3252件
     窃盗以外は、ぐっと数が少なくなる。知能犯に含まれる犯罪として、主なものを見ると、
     平成20年は、詐欺が6万4427(交通関係業過を除く刑法犯の3.54パーセント)、偽造が6503件、横領が2193件となる。

     なお、ここで言う横領には、占有離脱物横領は含まれていない。少し解説すると、放置されて持ち主がわからないバイクや自転車を勝手に持ってくると占有離脱物横領になる。
     占有離脱物横領は、警察統計ではその他の刑法犯に含まれるが、数は結構多くて、6万8171件(平成20年)である。

  • 平成19年 粗暴犯 7万2908件
    平成20年 粗暴犯 6万8948件

     平成20年の粗暴犯の内訳は以下のとおりである。
     傷害が2万8291件(交通関係業過を除く刑法犯の1.56パーセント)
     暴行が3万1641件(同 1.74パーセント)
     恐喝が   6349件(同 0.35パーセント)
     脅迫が   2651件
     凶器準備集合16件
     
     人に暴力を振るう事件の認知件数は、割合的には、それほど多いわけではない。窃盗と傷害は、犯罪として一般的にイメージしやすい割に、発生率には大きな差があることは注意しておいてよいであろう。

     もちろん、割合が小さくても、殴られた被害者は大変なのだから、それでよいということではない。
     ところで、しばしば、窃盗を犯した者が、自分は物は盗むが、人を傷つけたりはしない、といった言葉を口にすることがある。モーリス・ルブランの怪盗紳士ルパンで、ルパンは殺人はしない、といったことをルパン自身が誇りにしていたりする。心境としては似たようなところがあるのかもしれない。

     しかし、まあ、さんざん盗みをやっておいて、自分は人を傷つけるわけではありませんから、などと言われても、どうかという気がする。実は、これは、窃盗犯が自身の犯罪行動を合理化する一つのしばしば見られる手段なのだ。 

     なお、傷害のうち、136件(平成20年)は傷害致死である。
    殺人と傷害致死の違いを簡単に説明すると、人を殺すつもりで殺したのが殺人、殺すつもりはなかったけど殴っていたら死んでしまったというのが傷害致死である。

     殺意の有無、というのは、しばしば裁判では争点となる。最初から、殺すつもりでやったかどうか、というのはあくまで本人の内面、考え方の問題であるから、その点で、物的な証拠が残るわけではない。本人の直接語る動機を除いては、事前に包丁を買って準備をしていました、とか、被害者に対して殺してやると声を発していたとか、そういったところから、決めていくことになる。

     殺人と傷害致死では、傷害致死の方が罪が軽い。検察側が殺意を立証しようとし、弁護側が殺意を否定するという展開は、しばしば見られる裁判の風景である。あくまで、もともとの争点は、事件実行場面での、加害者の心の持ちようなので、うがった見方をすれば、後になって「殺すつもりはありませんでした。」と言えば、殺意の否定は主張としては簡単にできてしまう。

     被害者にしてみれば、すなわち、殺された側にとっては、殺すつもりのある人に殺されようと、殺すつもりがなくて殺されようと、結果に変わりはなく、いずれにしろたまったのものではないのだが、加害者にしてみれば、罪の重さが変わってくるので(死刑になるかならないか、といった違いになる場合もある)、重要な争点となるのだ。また、弁護する側も、法廷の場に持ち込みやすい争点、論点なのだろう。

     明確な殺意の有無、については、本当のところを明らかにするのは難しいと思われる。罪を逃れたくて、殺すつもりはありませんでした、と加害者が言うこともあるだろうが(覆すのは大変である)、そうでなくても実際のところ、どうかと言われると・・・本人にもよくわかっていない場合もあるだろう。

     この日、殺すことを決めて、計画をして、覚悟の上で殺しました、という事件ももちろんあるだろうが、交際相手から別れ話を切り出されて、感情的になり、たまたま持っていた果物ナイフで殺した、といった事案だとどうであろうか。

     例えば、加害者から事情を聞くと、「その時、自分は、本当は殺すつもりはなくて、持っていた果物ナイフを出すことで、相手に自分の本気を分かってもらおうとした。それでも相手が自分のことをわかってくれず、ナイフの取り合いになって、もみあいになって、気がついたら、相手が血を流して倒れていました。」などと言うかもしれない。
     
     その時点で、激しい怒りの感情に支配され、殺意を覚えた、といえばそうかもしれないが、何分、感情統制を失って、冷静な思考力を失ったりしているので、そこに明確な殺意があったかどうかは、自身でもよく分からないこともあるのではないかと思われる。
     少なくとも、相手に対する激しい攻撃感情に支配された、とまでは言えるが、殺意、とまでは言えるのかどうか、どこまで、自分は相手に攻撃を加えるときに、自分の意識や感覚を明確に認識をできていたのかどうかとなると、難しいところがある。

     そうなると、そもそも何でその時に、果物ナイフなぞを持っていたのか、と言う点が問題になったりする。最初から殺すつもりで持って行ったのではないのか、いえいえそんなことはなくて、たまたま、友達の家でりんごをむいた時に、ポケットに入れていたのが残っていて、とか、そんな会話が取り調べの場面で出てきたりする。

     事件当時の心の動きと言うのは、当時も後も、形になって残るものではなく、誰にとっても検証することは難しい。難しい分だけ、争点になる。本当のところは、もしかしたら、誰にも分からないかもしれない。

     刑の重さに直接関わってくることなので、警察からも、弁護士からも、そして自分でも、真実はどうであったのかを巡って、さんざん考え、問われたりしたら、、、あるいは、自分でも明確なところがよくわからなくなって、後になって加害者の供述が二転、三転することは考えられないわけでもないと思う。

     また、話が横道にそれた。続きを見てみよう。 

  • 平成19年 風俗犯 1万1184件
    平成20年 風俗犯 1万0559件
     
     風俗犯は賭博とわいせつである。
     平成20年では、賭博は、271件で数は少ない。
     同じく平成20年では、わいせつは、1万0288件で、種類が2つあって、強制わいせつ7111件、公然わいせつが2361件となる。

     強制わいせつは、無理やりわいせつなことをしようとするもので、たとえば、無理やり押し倒して乳房や陰部を触ったりするものである。公然わいせつは人前で性器を出したりするものである。

     余談になるが、筆者が見たことがある裁判で、女子高生に自分の性器を露出した男性犯罪者が、女性の裁判官から、
    「あなたのやった行為は、被害者女性の心を傷つけたのだから、暴力を振るったのと同じことなのよ」
    と厳しく責められていたことがある。
     
     理屈としては、わからない話ではないかもしれないが、よくよく考えても、あまりよくわからないという気もする。
     裁判とは、裁判官の個性や考え方が色濃くでるもので、大岡越前のような裁きがあったころと現在も、それは変わらないのだろう。こういった裁判での言い回しでは、説得力は、筆者から見ればあまりないと思うがどうだろうか。裁判官が、明晰な頭脳と正確な法律知識を持ち合わせているのは確かであろうが。

  • 平成19年 凶悪犯 9051件
    平成20年 凶悪犯 8581件
     
    平成20年の内訳を見ると、殺人が1297件、 強盗が4278件、 放火が1424件、強姦が1582件となる。
     刑法犯全体から見て、割合は少ないが、マスコミをにぎわす事件も少なくない。

     もちろん、凶悪犯に属する事件は、被害が甚大になることが多く、凄惨な事件の内容になることも少なくない。それゆえ、社会の中で大きく取り上げられることは、当然のことである。

     その一方で、犯罪については、犯罪の大部分は、盗みと交通事件、である、ということは認識しておくべきであろう。
     華々しく、世の中の脚光を浴びる凶悪事件もあろうが、世の中の犯罪実行者の大多数は、それに比べれば大したことのない事件を日々起こして、犯罪の認知件数を増やしている。 


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