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12 警察統計(その2)~認知と認知件数

 認知と認知件数は以下のように定義されている。

  •  認知とは、犯罪について、被害の届出若しくは告訴・告発を受理し、犯罪捜査規範第69条第1項若しくは第78条第1項による事件の移送を受け、又はその他の端緒によりその発生を確認することをいう(犯罪統計細則第2条)。
  •  認知件数とは、警察において発生を認知した事件の数をいう。

 犯罪捜査規範第○○条のところは、事件の管轄とか移送に関する部分なので、それほど気にしなくてよい。
(気になる人は、webで犯罪捜査規範を見れます。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F30301000002.html

 つまるところ、認知件数とは、警察が犯罪の発生のことを公式に確認した件数である。ある者が商店で万引きをしたが,その場面を誰も見ておらず,商店の側も被害に気がつかず警察への届出がなされない場合には、犯罪は発生しても、認知件数には入らない。

 この種のバリエーションはいくつも考えられ,誰かが見ていても通報しなかったり,軽微なものとして商店が通報しなかったり,といった場合が考えられるし,他には覚せい剤を自室で繰り返し使用していたが誰にも見つかっていないといった場合もあるだろう。犯罪の構成要件に該当する行為が現実に行われていてもその存在が誰にも知られることがない場合があり、これは暗数と呼ばれる。

 暗数のバリエーションとして、連続窃盗犯が警察に逮捕された際に生じる暗数を紹介しよう。窃盗犯の内のあるタイプは、捕まるまで窃盗を繰り返す。店舗荒らしや民家への侵入盗等である。1件や2件ではなく、半年、1年を経て数十件に及ぶこともある。それで、捕まってから取り調べを受けると、自分でもどこに侵入して、何を盗んだのか、はっきりと覚えていなくなることがある(酒好きの方は、自分がこの1年にどこの店で何を飲んだのかを全部列挙することができるか試みられるとよい)。
 犯人も悪気があって隠しているわけではなく、本当に覚えていなかったりすることもしばしばで、警察では被害届けと照合しながら供述調書を作っていくが、全ての被害で被害届が出ているとは限らない。
 こういった取り調べの作業は、限られた人的資源で国民の治安を守っている警察官にとっても大きな負担になるようだ。私が、以前に面接したことのある連続窃盗犯は、警察で「ここまで調べた事件で立件するから。」と言われ、「まだ他にもあると思うんですが・・。」と答えたものの、他の事件が調べられることはなかった旨を語っていた。

 警察統計では昭和40年までは「発生件数」という用語が使用されていたが、41年に名称が「認知件数」と変更された。そもそも、社会事象の発生をすべて観察することは不可能であるため、発生件数という用語は誤解を生じることにつながる(犯罪統計入門 浜井浩一(編)2006 p.51)。

 さて、警察に対して届出がなされても,それが必ずしも事件としては受理(認知)されないことがある。そうした時には、公式の犯罪統計に記録として表れてこない。さっきのところで、「正式に」と書いた所以である。

 1999年に起きた桶川ストーカー殺人事件をご存知だろうか。

 これは女子大生が,元交際相手とその兄が雇った男によって殺害された事件で、ストーカー行為にあって身の危険を感じていた被害者とその家族は、「殺されるかもしれないんです」と何度も埼玉県警上尾署に相談し告訴状を提出していたが、警察は事件受理を回避して捜査をしないで放置していたというものである(被害者の家族に告訴の取り下げを要求したり、告訴状を改竄していた)。

 いろいろと考えさせる事件であるが、ここで言いたいのは、警察に通報したり、被害を相談しただけでは、それが直ちに「認知」にはならず、「認知件数」にも計上されないということなので、念のため。

  事件が通報された後にも「事件」は公式統計に組み込まれるまでに,その通報に対処して意思決定を下す警察組織と刑事司法機構の各種の当事者による何次ものスクリーニングをくくり抜けなければならない。(中河伸俊 1996 逸脱・社会問題研究における公式統計の使用について 奈良女子大学社会学論集,3,49-62.)

 捜査機関の事件受理についての姿勢によって、認知件数はいくらでも左右されるのだ。


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