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10 操作的定義と概念的定義(その3)

 先ほどの操作的定義について、2つほど、留意しておく点を指摘しておく。

 さっきの定義では、人が殺されたり、人を殺していた場合でも、うまく測定されない、網に引っかかってこない場合があることに気がつきますか。探偵物ではないが、自殺と見せかけて実は他殺で、警察では自殺として処理されている場合とか、行方不明者なんだけど、実は人に殺されていて、警察がそれを把握していないとか。

 操作的定義に従っていくと、こうした取りこぼしがでてくる。そして、その取りこぼしを完全にフォローするすべはない。人が人を殺す、という定義をどんなに綿密に具体的に決めたとしても、神様が世界を見張っていて、その定義に当てはまった場合に、カウンターをチェックする、ということでもしない限りは、正確な数はわからない。警察の統計や裁判所の統計で出てくる、殺人、という数値は、あくまで殺人について真実の数はわからないけれども、その推定値を与えています、という意味になるのだ。これが一つ。

 もう一つは、人を殺す、ということについての操作的定義にもいろいろなバージョンがあるということである。人を殺す、という行為を刑事司法システムにおいては殺人という名称(概念)で取り扱うが、その取り扱い方にもいくつかのバージョンがあるのだ。

 殺人の認知件数は、刑法的定義の影響を受ける反面、正式な裁判手続きによって殺人と認定されたものを殺人として計上するほど厳密なものではなく、警察が殺人と認定したものが、すべて裁判所でも殺人として認定されているわけではなく、その意味では刑法上の殺人と同義ではない。つまり同じ刑事司法統計であっても、警察段階の殺人は、比較的単純に、人を殺した行為が計上されるのに対し、検察、裁判と手続きを経るごとに、より厳密な刑法上のスクリーニングが働くことになり、同じ1年間に発生する殺人の規模の操作的定義でも、警察の認知件数、検察の受理人員、裁判の終局事件数のどれを操作的定義として用いるかで結果は異なる。一般的に、殺人では、これらの統計の乖離はそれほど大きくはないが、強盗や強制わいせつなどでは、かなり大きくなる(犯罪統計入門 浜井浩一(編)2006 p.7)。


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