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9 操作的定義と概念的定義(その2)

 それでは,犯罪の概念的定義と操作的定義について見ていこう。先ほどは使い物にならない,と書いたが,犯罪の概念的定義は,「悪いこと」という意味合いを含んだものになるであろう。

 とはいえ,広辞苑における犯罪の定義は「法を犯すこと。また,犯した罪。」となっているなど,犯罪という概念には人から嫌がられる,好ましくない行為という価値が含まれている。そして,そうした行為が,刑法の対象ともなるため,犯罪学と刑法の犯罪の定義が,その内容においてまったく異なるものにはなりえない。(犯罪統計入門 浜井浩一(編)2006 p.7)

 「人から嫌がられること」,「好ましくないこと」というのは、概念的定義の一つのバージョンである。非常に抽象的な定義である。さてここから、抽象度を下げていく作業を行って、測定できるようにし(操作化)、犯罪の操作的定義を完成させていこう。

 犯罪は、人から嫌がられること、好ましくないことなのだから、もう少し具体的にすれば、人のもの盗む、人に暴力をふるって怪我をさせる、人を殺す、etc.といったことが犯罪になるだろう。

 これらは、まだまだ、抽象度が高くて、操作的定義とは言えない。たとえば、先にあげたもののうちで、犯罪に含まれるものとして「人を殺すこと」、という部分を見てみよう。人を殺すこと、というのが、それだけでは測定可能なものではないこと、実体のあるものとして取り扱いが可能になったわけではないことがわかるだろうか。

 日本全国の人々が今現在も、人を殺すことをしているが、だからといって、どのくらいの人が殺して、どのくらいの人が殺されているのかわからないでしょう。操作的定義というからにはもっともっと具体的で、あたかも物に触れるとそれとわかる(tangible)かのように、測定可能でないといけない。

 人が殺されたということは、その人は少なくとも死んでいなくてはいけない。死んでいるってどういうことだろう。動いてないとか、呼びかけても返事がないとか、心臓が止まっているとか、もう生き返らないとか、専門的になると、瞳孔の散大とか。人が死亡したかどうかは、正式には医師に診断をしてもらう必要がある。人を殺すこと、ということなので、人がただ死んだだけではだめで、誰かに殺されている必要がある。誰かに殺されたというのは、どうやって確認するのだろうか。誰かが殺したという場合にも、その人がちゃんと(?)人を殺したかどうか正式に確認される必要があるだろう。

 医師が心拍の停止を確認し、死亡を宣告した後に、遺体を検案し、異常を認め、死体検案書の死亡欄に他殺と記載した状態、あるいは、警察や裁判所によって殺人と認知された状態(犯罪統計入門 浜井浩一(編)2006 p.9)。

 これくらいまで、具体的にすれば、犯罪、のうちの人を殺す行為(刑法では殺人と読んでいる)の操作的定義が完成したといってよいだろう。これならば、その気になれば、今年日本でどのくらい人を殺すという行為が行われたかを把握することができるようになる。
 


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