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1 犯罪理解のために

 犯罪については,連日,事件としてテレビや新聞などで報道されている。人々の興味,関心をひく話題であるし,注目も集める。それは犯罪という現象の一つの側面には違いないが,そうした報道や記事を追いかけているだけでは,犯罪に対する理解は偏ったものになるし,誤った考え方をすることにもつながる。

 講義では,そもそも犯罪とはなんなのだろうか,といった話題から始まり,犯罪をどのように理解するのか,どのように把握するのか,どのように研究対象とし,分析を行っていくのか等について話を進めていきたい。

  なお、この講義では、犯罪現象をマクロな視点から見ていくこととしたい。マクロな視点とは何かというと、いわゆる犯罪統計の数値という、計量データを元にして犯罪について考えていく、ということである。

 例えば、殺人事件があったとしよう。そこには、被害者と加害者がいて、おそらく加害者にはなんらかの考えがあって犯罪行動に及んでおり、その加害者はどんな性格で、どんな生い立ちをしていて、犯行当時はどういった社会経済状態に置かれ、心理状態はどうであり、被害者との関係はどのようであり、などなど1つの事件についても詳しく探っていけば、いろいろな内容を含んでいる。適切な処遇選択の必要性や社会的な要請もあって、加害者の性質、特に動機の理解について大きな関心が持たれる。

 しかし、犯罪統計上は、基本的には単に「1件の殺人事件」としてカウントされることになる。その数値を巡っていろいろ考えていきましょう、というのが本講義の趣旨である。

 このように書くと、なんとなく人の犯罪行動の複雑で微妙な襞の部分を無視してしまっているような印象も受けるし、事実そういう面がなきにしもあらずではあるが、いえいえ講義を聴いていけば、そうした犯罪統計の数値は世の犯罪についていろいろなことを語っていることがわかる思う。特にマスコミや社会情勢、施策といった点について、興味深い力動を見ることができるのだ。

 なお、もっと加害者や被害者の視点に接近した、個別の事例検討に近い、ミクロな犯罪のとらえ方については、別に講義を設けるので興味がある方はぜひそちらに参加していただきたい。

 少し前置きが長くなってしまったが、それでは以下のような問題提起から講義を始めていくこととしよう。

 最近,治安の悪化が叫ばれ,認知件数や検挙率といった犯罪統計が頻繁にマス・メディアに登場するようになってきた。治安の悪化は,有識者を含めて,多くの国民にとって既定の事実として受け入れられてきている。しかし,その根拠として使われることの多い認知件数や検挙率といった警察統計とは,いったい何を測っている統計なのだろうか。そもそも治安とは何を意味しているのか。(犯罪統計入門 浜井浩一(編)2006)

 これから学習を進めていくことで,犯罪について,世間一般に言われていることが,果たして本当にそうであるのか,といった疑問の目で捉えなおすことができるようになるだろう。我が国の治安は悪化しているのか,犯罪は凶悪化しているのか,近年児童虐待は大幅に増加したのか…etc。新聞報道や有識者の発言について,誤りを指摘することができるようになるだろう。


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