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3 犯罪とは?を巡る諸問題(その1)

 犯罪とはなんだろうか?
 改まって問われると,どう答えればよいのか困ってしまう。

 まず,最初に確認しておくこととして,「犯罪」はリンゴや自動車のように具体的な実体を持たない,というのがある。目に見えないし,手に持ったりして,「これが犯罪だよ」と指し示すことできないのだ(だから,そのままでは数えたり、大小比較をしたりなどして、数量を評価することができない)。

 具体的な実体がないけれども,その存在を認めて取り扱う。これを構成概念という。犯罪は構成概念なのである。構成概念は,実体のない人の心や行動を研究の対象とする心理学では頻繁に出てくるのでおなじみだろう。「性格」,「知能」,「攻撃性」といったものと同じである。

 実体がないので,構成概念は定義によって特徴付けられる,というか存在を許されることになる。例えば,「知能」は実体を持たない。だから,知能とはどういったものであるかを定義していくのである。そうして定義をしていくことによって,知能というものをあたかも存在するもののように取り扱うのである。定義の仕方にはいろいろある(知能」に様々な定義の仕方があるのはご存知だろうか)。

 定義をするにしてももうまくやらないと,構成概念がどういうものなのか本質がよくわからなくなる。というか構成概念は定義が命なのだ。定義をしっかりすることで構成概念も明確に存在することになる。

 さて,話を犯罪にもどそう。犯罪は実体がない,それでは,犯罪をどう定義するかが問題となる。単純に,

 「犯罪=悪いこと,やってはいけないこと」

と定義してみてもよい。定義すること自体に制約はないので,これでも別によいのだが,こうした定義だと困ったことが起こってしまう。それでは,「悪いこと」ってなんだろう。「やってはいけないこと」ってどんなことなんだろう,という疑問が出てくるのだ。

 我々の社会では,犯罪をした人間を捕まえて,裁判をして,その処遇(懲役とか死刑とか)を決めることにしている。だから,先ほどのような,ある意味でいい加減な定義では,役に立たない。そこで,犯罪についての刑法上の定義というのが出てくるわけである。刑事司法システムにおいてはこの定義に従って手続きが進められ,犯罪が取り扱われ,犯罪者が取り扱われていくのだ。


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